食いしん坊日記

2026/03/19 08:04

 

早春の沼田。

靄がかかり、雨も降っている。

植物だけではなく、いろいろなものが眠りから覚めていく

ここで新しい企画の撮影をする。

持ち込んだクリーピングタイムの緑が深めで良い。


食に関わる仕事をしていると、食べたものについて感想や意見を求められたり、評価したりという機会が多い。

プロとして発信する以上、少なくとも美味しいか、不味いかの態度ははっきりするようにしている。

しかし、ときおりそういうお約束的なやり口を飛び越えるものに出会う。

それは、まさに感動。

そういう感動を味わうためにこの仕事をしているような気にさえなる。沼田でそんな食についに出会った片品庵。

恵比寿で洋服屋をしている

友人H君が教えてくれた店。

沼高通りから一本入ったところで1966年に創業。

うどん、そば、そしてカレー。

60年にわたって地元住民の胃袋を満たし続けてきたこの店は

創業者を含めて女性3世代で切り盛りしているらしい。

11時半開店に数分遅れて入店すると空いている席は3つだけ。

常連さんなのかすでに食べ終えている2人連れのご婦人のほか

ぼく以外の客全員が恐らく70歳超え。

3代目が合流するまで、2代目がひとりで切り盛りしていたため、

(初代は90歳をすぎており、本日はデーサービスの日でお休みらしい)

着席からオーダーインまで約15分かかった。

ぼくは2代目がぼくの来店をチラリと見て認識したので

手が空いたらオーダーを取りに来てくれるものと

大人しく待っていた。

途中、ぼくの後から来た客たちが注文しようと2代目に声をかけた。

「いま、忙しいからちょっと待ってね」

先口の客の注文を仕上げている。

「手が空いたら注文聞きに行くからね」

彼らも大人しく待つ。

そして、先口3組の料理を出し終えて

2代目の手が空き、オーダーを取りに来てくれた。

当たり前だけど、ちょっと嬉しくてぼくは思わず微笑んでいた。

天ぷらうどんとミニカレーライスをオーダー。

この店はうどんもそばも自家製。

だからなんとうどんとそばをミックスしたミックスというメニューもある。

やはり常連らしい客がこのミックス大を食べていた。

茹で上げたうどんとそばが一緒に盛られていて

それらを混ざったまま、がさっと箸で上げて、

熱いだしにつけて食べている。

これはなんかすごいぞ。

こんな経験は家でもないし、こんな店も初めて。

ボリューム感もすごい。

天ぷらいっぱい。これも相当いい。

しかも激安。

かけそば、かけうどんは400円。ミックス大500円。

(天ぷらうどん650円、ミニカレーライス300円)

時間が止まったような価格設定。

儲けようとしていないのだ。

そこにこの店の哲学があるのだと思う。

オーダーしてからは速かった。

10分かかっていないと思う。

 

天ぷらたっぷり。

春菊やらさつまいもやら、ちくわやら、

そのうえ旬のふきのとうもある。

これはたまらない。

麺は自家製麺らしく、いい感じでぼこぼこしていて

もっちりしてコシはさほどなく実に食べやすい。

だしは醤油のキレがあるが、めんつゆとしてはやや薄味か。

小皿に付け合わせの漬物があり、

誰かがクチコミでこれが味が濃いので

薄めのつゆに入れて混ぜ込んで食べたとあったので

それに倣う。なるほど悪くない。

カレーもいいのだ。

ちゃんとスパイス感がある。

いわゆるおそばやさんの黄色いだしカレーとは違う。

肉なんてほろほろになっているし、野菜も角がとれて

十分に煮込まれているが、インド風でも欧風でもない。

これもまた自家製。

全体がオリジナル色。

それを愛する人たちへ儲け度外視での提供。

これは、美味しいとか不味いとか、

そんな価値判断なんて失礼すぎてできない。

この有り様が素晴らしいの一言。

荒々しくも洗練された沼田のうどんそばやさん。

今度はミックス大にチャレンジしよう。

H君、教えてくれてありがとう。ここは素晴らしいよ!

 

 

 

 

番外編

 

いつの間にか入店していた30代くらいの男が

大盛りカレーうどんを頼んでいて

大きな丼にぼくが食べているカレーが

山のようにトッピングされて運ばれてきた。

このカレーの旨さ、凄さを知り尽くしている男だな。

これにも今度チャレンジしてみたい。。。。